前回に引き続き、6年生の「ラーバスコンチェルト」を教材とした器楽の学習の指導案の検討をしました。
本日、検討の中心となったのは、「思い」についてでした。子供たちが2番をアレンジをしようと、音楽を形づくっている要素(以降〔音楽の素〕と記します)をいろいろと操作しますが、その操作をする根拠となるのが「思い」です。
操作をする根拠となるしっかりとした「思い」をもって〔音楽の素〕を操作できる力を、一人ひとりにつけさせたいという願いを授業者の先生はおもちです。とても素晴らしいお考えだと思います。このような経験を器楽でしておけば、例えば鑑賞の授業で、操作された〔音楽の素〕に気付いたとき、単に「速さが変わった!」と聴き取るだけでなく、「速さが変わることで、どのような音楽の良さが表現されているのか」とか、「速さを変えることで、作曲者はどんな思いを伝えたかったのか」などを、自分の言葉で判断をすることもできるようになるでしょう。
しかし、この根拠となる「思い」を音楽の外に設定するか、音楽の中だけに限って設定するかが、重大な問題となってきます。
前者の音楽の外に設定するというのは、例えば、「〈ラバースコンチェルト〉をどんな人にプレゼントしたいですか?」と問いかけ、「優しい人に贈る〈ラバースコンチェルト〉」とか、「元気な人に贈る〈ラバースコンチェルト〉」などというテーマを決め、「優しい人に聴かせるのだから、テンポはゆっくりにして、強弱は抑えめで、レガートで演奏しよう」などと〔音楽の素〕を操作していくやり方です。このやり方で注意しなければならないのは、音楽の外にある「思い」が、音楽のよさよりも優位に立ってしまうことがないようにすることです。「元気の良い人に贈る」を表現したいからといって、子供たちが音楽的な良さを失うくらいのスピードで演奏しようとするかもしれませんし、非音楽的なレベルまで音量を大きく演奏したいと子供たちが思うかもしれません。「思い」は音楽の外にあっても、あくまでも、音楽の良さや美しさ、面白さの範囲の中での「思い」の実現であることを、先生がしっかりとコントロールすることが重要です。
後者の音楽の中に「思い」を設定するというのは、「この曲はとても美しい旋律と、2つの旋律の重なり、反復と変化に大きな特徴がある」という楽曲の良さをしっかりと把握した上で、「美しい旋律の良さを損なわないようにしながら、さらに魅力的になるように旋律を少し変化させてみよう」というような「思い」を設定して〔音楽の素〕を操作していく方法です。
どちらかというと、前者は低・中学年的な学習の進め方であり、6年生は後者のような音楽の中に「思い」を設定してアレンジしていく学習方法が有効かと思われます。
しかし、学校や子供たちの実態もありますので、校内の音楽部の先生方との協議でも話し合っていただき、結論を出していくことになりました。