諦めないことの大切さ

 先生方、いかがお過ごしでしょうか。

 激動の一学期が終わったと思ったら、すぐに二学期のはじまりですね。コロナと猛暑で、体を壊されたりはしていませんか。本当にお疲れ様です。

   さて、以前、このホームページに、3月初めからの突然の臨時休業により定期演奏会ができなくなってしまった小学校吹奏楽部の話題を掲載させていただきましたが、本日は、その後日談を報告させていただきます。

 

 昨年秋から入念な準備をして3月7日に予定されていた定期演奏会は、1週間前の「臨時休業宣言」によって、開催を目前に子供たちの希望と夢が絶たれてしまいました。多くの学校が泣く泣く演奏会を中止する中、その学校は、「中止」するのではなく、期日未定で「延期」という決断をしました。

 当初は、5月末に同じ会場を押さえて開催を目指しましたが、臨時休業が5月末まで延長されてしまったために、そこでも開催することができませんでした。その間も、毎年楽しみにしていた中高生と一緒に演奏できる華やかなステージが中止になりました。吹奏楽コンクール中止の報も届きました。そして、臨時休業の延長。次々に届く残念な情報に、先生も子どもたちも、何度も何度も悲しい思いをすることとなってしまいました。普通でしたら、こんなに何回も悲しい思いをするならもう諦めても…、という空気も出でくるのが当然ですが、顧問の先生の揺るがない意志が原動力となって、ここの学校の子供たちはもちろん、先生方も保護者も地域で応援してくださる皆様も、誰一人諦めること無く、「再延期」をして開催のチャンスを待ったのでした。

 そして、ついに724日、教育委員会から開催の承認をいただき、すでに中学1年生になっているメンバーも含め、3月の開催を目指していた全部員が集まり、3月に予約していた同じ大ホールで、念願の定期演奏会を開催したのです。

 

 3月から6月中旬までは、完全に活動が停止でした。顧問の先生が配信する音源を頼りに、楽器の音の出せる子はそれに合わせて個人練習をし、家で音の出せない子はマウスピースだけ、あるいは譜読みだけといった状況で頑張りました。6月中旬から活動が再開されましたが、活動時間や練習場所、活動内容に大きな制限があり、合奏練習はなかなかできませんでした。市の教育委員会から示された部活動再開の手順に従って徐々に練習ができるようになりましたが、この日までにみんなで合奏練習ができたのは、2時間の練習が2回だけでした。

 しかも、東京都をはじめ各地で感染の再拡大が報告される中、演奏者も聴衆も、当日のお手伝いのスタッフも、全員が細心の注意を払って感染防止に努めながらの演奏会準備でした。卒業生のボランティアスタッフの若いメンバーには、2週間前から朝晩の検温の実施に加え、外食や飲み会の禁止が言い渡されていたほどです。

 

 演奏会当日は、定員1300人のホールに、保護者と教員、地域の関係者のみの約250人が入場し、間隔を大きくとって着席しました。ステージもオーケストラピットをステージと同じ高さにあげて演奏者の間隔を十分に確保しました。様々なガイドラインを参考にしながら、考えられるすべての感染防止対策がとられていたと思います。演奏者も、ステージに並ぶまでマスクを着用し、楽器を吹くときだけマスクを外すほどの徹底ぶりです。司会者として話す時や歌う場面など、声を発する場面では、必ずマスクを付けました。楽屋は狭く密になる心配があるので、同じ会場内にある大きな会議室を控室として借り切ってチューニングをしました。全国に先駆けて演奏会をやることになるので、もしもクラスターを発生させてしまったら、全国の吹奏楽部に迷惑をかけてしまいます。この演奏会に関わるすべての人々が、一人一人、強い責任感をもって行動した一日になりました。

 

 さて、演奏会の中身です。私は、わずかな練習でしたので最高の演奏は望んではいけないと考えていました。「曲の途中で止まらなければ上出来…」くらいの気持ちでいました。ところが、なんということでしょう!子供たちのよろこびにあふれる生き生きとした音楽は、私の予想をはるかに超えるすばらしい演奏の連続でした。アンサンブルも含めて全部で22曲、約2時間、豊かなサウンドと温かい気持ちに包まれ、時間がもっとゆっくり流れて欲しいと思いながら、11曲を聴かせてもらいました。ステージ上には、長いブランクがあったのが信じられないくらい、一人一人が顔を上げて、自信をもって、のびのびと音楽を奏でる姿がありました。卒業生は、これまで身に付けてきた力を存分に発揮した見事なソロを一人一人が聴かせてくれました。在校生も、立派に成長した音色で演奏を盛り上げました。

 子供たちが、長い休業期間中も自分のできる範囲で精一杯の努力をしてきたことが、サウンドから、そして演奏する態度からひしひしと感じられ、「止まらなければ上出来」などと考えていた自分がとても恥ずかしくなりました。顧問の先生と子供たちのこの日までの努力が見事に実を結んだ演奏会となりました。

 長く音楽のできない期間があったからこそ、音楽をする喜びを心の底から感じ取ることができたのでしょう。その喜び、嬉しさが、子供たちの奏でる楽器から音となって聴くものに伝わってきました。コンクールや演奏会が普通にできる年では、みんなで合奏をすることは当たり前です。でも、今年はみんなと合わせて演奏することは、とても貴重でかけがえのない時間です。だからこそ、いつもの年ではけっして味わうことのできない音楽本来の喜び、「一緒に音楽をやるってこんなに楽しいんだ!」という喜びを、顧問の先生も子供たちも心から味わっていると感じられました。そんな先生と子供たちが、とてもうらやましいという気持ちになりました。

 

 終演時、今年は、ステージを広げて使っているので緞帳は降りません。パートがごとに、ステージの前まで出て、聴いてくださった皆様にお礼のあいさつをして、子供たちがステージ袖に戻ってきました。その顔は、どの子もやりきったという満足感がいっぱいの充実した表情でした。そして涙も…。

 数日後、演奏会後の子供たちや保護者の感想文を顧問の先生が送ってくれました。そこには、この演奏会を開くことができたことへの喜びの気持ちが溢れていました。くじけそうになった時に、顧問の先生から届くメールや音源、楽譜などが自分を励ましてくれたこと、諦めなくて本当に良かったこと、努力を続けることの大切さを味わったこと、支えてくださった人々へ心から感謝の気持ちをもったことなどが、飾ることのない自分の言葉で表現されていました。そして何よりも音楽を奏でる本来の喜びを味わうことのできた嬉しさに満ちあふれた文章ばかりでした。

 

 この演奏会は、開催を認めてくださった教育委員会や中学1年生を快く送り出してくださった進学先中学校の先生方のご配慮などがなければ実現しなかったでしょう。顧問の先生をはじめとする学校の先生方の強い意志と協力体制もすばらしかったと思います。そして、前年度の役員さんたちが期間を延長してお仕事をしてくださり、新しい役員さんたちと団結して献身的に準備をしてくださった保護者会役員さんたちも大きな存在となりました。さらに、会場の市民会館も緊急事態宣言明けの最初の行事となったにもかかわらず、会館の技術スタッフをはじめ職員の皆様が様々な面でバックアップしてくださいました。

 今振り返ると、この演奏会は、子供たちと顧問の先生をはじめとする先生方、保護者会役員さんをはじめとする保護者の皆様、卒業生スタッフ、関係機関の方々、そして、地域で支えてくださる吹奏楽部ファンの皆様、大勢の皆様の気持ちが、同じ方向を向いて結集したからこそ実現した奇跡であったように感じられます。

 

 演奏会が終わって2週間以上が経過し、この演奏会会場での新型コロナウィルスの感染は無かったことが確実になりました。関係の皆様は、ホッとされていることと思います。

 新型コロナウィルスに負けること無くこの演奏会が実現できたことで、演奏した子供たちは、諦めないことの大切さ、そしてひたむきに努力することの素晴らしさを味わったことと思います。そして、私を含め、この演奏会に関わったすべての人々が、大きな勇気と感動をもらったことと思います。まだまだ制限の多い音楽活動ですが、これからも全国各地にこのような感動の輪が広がっていくことを心から願っています。

 

 

 

 

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